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化粧品の規制について~実践編1:法定表示~

COLUMN 基礎知識

化粧品の規制を紹介するコラムの6回目です。
今回は法定表示の記載内容を決めるための実践的なお話をしていきます。
法定表示の概念については前回のコラム「化粧品の規制について~入門編:法定表示とは~」を是非お読みください。

内容が多くなりますので、2回に分け、
【実践編1】では販売名、種類別名称、内容量、使用方法、全成分
【実践編2】では使用上の注意や原産国、その他の規則を紹介する予定です。

<販売名>

化粧品は製造する前に化粧品製造販売届という書面を用いて名称を届け出る必要があります。法定表示の販売名は、その際届け出た名称を記載します。
なお、この届出は次の項目に該当する恐れがあると判断された場合には行政から受理を拒絶されます。
届出を行う前に表示内容やデザインを決めていると2度手間になりますので、なによりもまず先に届出を行うようにしましょう。

-受理を拒絶される名称
①既存の製品と同一の名称
②虚偽・誇大あるいは誤解を招くおそれのある名称
③配合されている特定の成分が含まれる名称(化粧品の表示に関する公正競争規約施行規則15条に例外規定あり)
④ローマ字のみの名称
⑤アルファベット、数字、記号等が多い名称
⑥剤型と異なる名称
⑦他社が商標権を有する名称
⑧公正競争規約に抵触する名称
⑨医薬品・医薬部外品とまぎらわしい名称
⑩化粧品に認められている効果(56の効能効果)以外の効果があるように見えるおそれのある名称
⑪「セラム」など一般的過ぎて他社と区別のできない名称

②、⑩において「おそれのある」状態は人によっても判断が別れるところです。
不意に拒絶されてしまう場合、②か⑩が原因であることが多いですね。
なお、⑤の「多い」状態の定義は各都道府県庁でも意見が割れているようです。
目安としては日本語と英数字の割合が50:50だと英数字が「多い」と判断されやすいと考えておけば良いでしょう。

記載文字の大きさにも規定があります。7ポイント以上でなければなりません。
スペースが余りにも狭い場合には例外的に4.5ポイントの文字が認められますが、デザインやイラストを可能な限り省いた上で、
どうしても物理的に入り切らないという状況でなければ認められることは難しいです。

なお30mL、30g以下の製品には文字ポイントの大きさの規定はありません。
ただし法定表示は問題が起きたときに製造販売業者が適切な行動を取るためにありますので
「一般的なエンドユーザーが苦労せず読める」だけの文字の大きさは確保する必要があります。

<種類別名称>

種類別名称は製品の分類を記載するものであり、製品が持つ目的をエンドユーザーに判りやすく示すために記載します。
判りやすくなければなりませんので、記載するべき名称は製品ごとに大まかに決められています。
独自に造語を作らないようにしましょう。
化粧品の表示に関する公正競争規約施行規則 別表1の中から適切なものを選び記載してください。
表示は括弧、枠組み、色替え、肉太等により目立つように表示しなければいけません。

文字ポイントの規定は販売名の項目で記載したものと同じです。

<内容量>

適切なmLやgを記載します。
mLとgは一般的には内容物の物性で使い分けられ、10000センチポイズ未満の粘度の場合はmL、10000センチポイズ以上の場合はgを使用します。
化粧水のような水っぽいものはmL、クリームのようなとろみのあるものや固体はgを使うと覚えておけばよいでしょう。
10mLまたは10g以下、もしくは外から見て数が数えられるもので6個以下のものは内容量記載の省略が認められます。

-内容量の下振れと上振れ

記載内容量に対し実内容量が3%以上不足している場合は法律違反となります。
上振れはエンドユーザー視点ではメリットとなりますので通常規制はないのですが、面白いことに石鹸だけは規制があります。
製造後約5ヶ月の時点で到達するであろう重量。ただし、購入時の誤差は原則として±5%(枠練り石けんにあっては±10%)
これは石鹸の生産工程には、ほぼすべからく「乾燥」が含まれることが理由です。
十分に乾燥していない石鹸を市場に出させないことが目的ですね。

<使用方法>

使用方法には製品の使い方を判りやすく記載します。
化粧箱がある場合、化粧箱に記載があれば内容物への記載は省略できますが、
エンドユーザーが化粧箱を捨ててしまうこともありますので、省略をするかどうかは自社でよく検討した上で決定してください。

<全成分>

化粧品には全成分の記載が必要で、配合量順で多いものから記載します。1%以下は順不同でかまいません。

例外的に企業秘密成分とキャリーオーバーは記載しなくても良いとされています。
ただし企業秘密成分の認定は厚生労働省の許可が必要であり、私の知る限り厚生労働省が認めた前例はありません。
実は日本が全成分表示の規制を制定する時にアメリカの規制を参考にしたのですが、
アメリカの規制にこの項目があったので一緒に盛り込まれたようです。
あくまでも保険的に盛り込んだだけで厚生労働省は目下、企業秘密成分を認めるつもりはないと考えられていますので、
通常業務では考えなくても良いでしょう。

キャリーオーバーの定義は主に原料に含まれる、
製造に意図しない、かつ実製品に影響を与えない微量に含まれてしまう物質です。

市場において下線部がよく認知されていないケースがありますのでご注意ください。
万が一実製品に影響を与える量が入っていた場合は、意図していなかったとしてもキャリーオーバーの定義から外れてしまうため記載義務が発生します。

全成分は使用方法同様、化粧箱に記載があれば内容物への省略が可能です。
ただし全成分はエンドユーザーが自分のアレルギーを知っている場合、
自己防衛に非常に役立つ情報ですので、省略はよく考えてご判断ください。
大衆浴場などに使われる可能性がある製品は省略しない方が良いでしょう。

いかがでしたか?
細かい規則も多いですが、内容量は石鹸だけが特別に規定されていることなど、
よく考えられていて知れば知るほど面白いものでもあります。

法定表示の大枠は公正取引委員会のHPに記載がありますので、興味があれば見てみてください。
次回は実践編2として使用上の注意などを紹介する予定です。

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